FIFAランクは信用できる?ロシアW杯で最も意外な活躍をした国とは

文化
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何とはなしに2018年7月8日放送「ベスト4決定緊急生放送!2018FIFAワールドカップ」(フジテレビ系列)という番組を録画していた。そこでは、イングランドとパナマのレベル差を説明する際に、ロシアW杯出場32カ国の「平均年俸ランキング」(ハーバー・ビジネス・オンライン出典)なるものが紹介されていた。

お金の話となるとまた別な興味が湧いてくる。サッカー大国とされる国の代表チームはやはり平均年俸も高くなるのか?平均年俸とFIFAランキングにどれほどの相関関係があるのか?その平均年俸やFIFAランキングの割に今大会頑張った国はどこか?などなど。先の「平均年俸ランキング」を勝手にグループ分けし、それらの疑問を順に検証していきたいと思う。

検証

Sグループ(1~8位)

1位:ブラジル(約8億5000万円)…FIFAランク2位、今大会ベスト8

2位:スペイン(約8億100万円)…FIFAランク10位、今大会ベスト16

3位:ベルギー(約7億6500万円)…FIFAランク3位、今大会ベスト4

4位:フランス(約7億6300万円)…FIFAランク7位、今大会決勝進出

5位:アルゼンチン(約7億3800万円)…FIFAランク5位、今大会ベスト16

6位:ドイツ(約7億1400万円)…FIFAランク1位、今大会GL敗退

7位:イングランド(約6億1400万円)…FIFAランク12位、今大会ベスト4

8位:ポルトガル(約5億4000万円)…FIFAランク4位、今大会ベスト16

一般的に「サッカー大国」と認知されている国が見事に出揃った。今大会は出場が叶わなかったイタリア代表とオランダ代表もおそらくこの5~8億円の間に収まるのではないだろうか。この平均年俸、ネイマール(ブラジル)、メッシ(アルゼンチン)、C・ロナウド(ポルトガル)といった一部の数十億円プレイヤーによって押し上げられている側面はあるものの、やはりこれらの国には控えをも含めた選手層の厚さを感じる。最新のFIFAランキングとの相関関係については、日本と同じくW杯直前にゴタゴタしたスペイン代表と近年低迷中のイングランド代表の2カ国でやや乖離が見られた。

Aグループ(9~16位)

9位:クロアチア(約3億7800万円)…FIFAランク20位、今大会決勝進出

10位:ウルグアイ(約3億6200万円)…FIFAランク14位、今大会ベスト8

11位:コロンビア(約2億7700万円)…FIFAランク16位、今大会ベスト16

12位:ポーランド(約2億4800万円)…FIFAランク8位、今大会GL敗退

13位:セネガル(約2億4500万円)…FIFAランク27位、今大会GL敗退

14位:セルビア(約2億3700万円)…FIFAランク34位、今大会GL敗退

15位:スイス(約2億3400万円)…FIFAランク6位、今大会ベスト16

16位:メキシコ(約2億3000万円)…FIFAランク15位、今大会ベスト16

「サッカー大国」とはいえないまでも、「サッカー強豪国」と呼ばれることの多い国が揃った。そして、日本が今大会グループリーグで戦った3カ国が11~13位にちょうど並んで入っている。FIFAランキングからこの3カ国の中でもっとも格下と見られていたセネガル代表は、グループリーグで惜しくも敗退したものの、平均年俸通りのパフォーマンスを発揮したといえるだろう。セネガル以外では、FIFAランク34位のセルビアと6位のスイスが逆のベクトルで平均年俸との乖離を見せている。これらの国はいつ優勝しても不思議ではないが、Sグループ+イタリア以外の国の優勝は、1950年のウルグアイまで遡らなければならない。

Bグループ(17~24位)

17位:ロシア(約2億500万円)…FIFAランク70位、今大会ベスト8

18位:ナイジェリア(約2億200万円)…FIFAランク48位、今大会GL敗退

19位:スウェーデン(約1億8600万円)…FIFAランク24位、今大会ベスト8

20位:デンマーク(約1億7900万円)…FIFAランク12位、今大会ベスト16

21位:モロッコ(約1億6300万円)…FIFAランク41位、今大会GL敗退

22位:日本(約1億5100万円)…FIFAランク61位、今大会ベスト16

23位:エジプト(約1億2500万円)…FIFAランク45位、今大会GL敗退

24位:アイスランド(約1億800万円)…FIFAランク22位、今大会GL敗退

18~20位のナイジェリア、スウェーデン、デンマークの3カ国は、Aグループの国と遜色のないサッカー強豪国といえる。BグループとAグループの間には、AグループとSグループほどの年俸差はないのであるから、それは当然といえば当然である。しかし、3カ国以外のロシアや日本がサッカー強豪国かと問われると、YESとはどうもいえそうにない。FIFAランキングにも見事にばらつきが見られる。ところが、そのFIFAランクワースト2のロシアと日本がグループリーグを突破し、決勝トーナメントでもサッカー大国や強豪国に負けないパフォーマンスを発揮した。やはりFIFAランキングより平均年俸を信用するべきなのだろうか。

Cグループ(25~32位)

25位:サウジアラビア(約9800万円)…FIFAランク67位、今大会GL敗退

26位:オーストラリア(約9500万円)…FIFAランク36位、今大会GL敗退

27位:韓国(約9400万円)…FIFAランク57位、今大会GL敗退

28位:コスタリカ(約9200万円)…FIFAランク23位、今大会GL敗退

29位:ペルー(約8200万円)…FIFAランク11位、今大会GL敗退

30位:チェニジア(約6400万円)…FIFAランク21位、今大会GL敗退

31位:イラン(約5300万円)…FIFAランク37位、今大会GL敗退

32位:パナマ(約2200万円)…FIFAランク55位、今大会GL敗退

見事にすべての国がグループリーグ敗退となった。グループリーグを突破し決勝トーナメントに進んだ国の数は、Sグループが8→7、Aグループが8→5、Bグループが8→4。22位の日本代表と比べた場合、25位のサウジアラビアでも3分の2以下の平均年俸となる。韓国やイランのようにサッカー大国相手に良い勝負をした例も見られるが、いずれの国も3戦通して安定した力を発揮することができなかった。つまり、選手層の厚みが足りなかった。そうなると調子の悪い選手でも出さなければならない。その差が出たということなのだろう。

結論

FIFAランクにしてもW杯の成績にしても、直近のチームのコンディションやムードによって大きく結果は変わってくる。W杯直前に監督の解任劇があったスペイン代表やチーム内にいろいろな問題を抱えていたドイツ代表は今大会、本来の力を発揮できず格下の相手にも負けた。イタリア代表やオランダ代表は欧州予選すら突破できず、FIFAランキングを大きく下げている。それでも彼らの実力は疑いえない。その力をストレートに表しているのが「平均年俸」なのだろう。市場原理主義者でなくても、市場価値がある一定の信頼性を担保していることは知っている。

そんななか、スペインと同じようにW杯直前に内部でゴタゴタが続いた日本代表は今大会、FIFAランキングでも平均年俸ランキングでも格上のコロンビア、セネガル、ポーランドを相手にグループリーグを勝ち抜き、決勝トーナメントではFIFAランキング、平均年俸ランキングともに世界3位のベルギーを相手に劇的な勝負を演じた。史上最弱の開催国とも揶揄されたロシア代表はベスト8まで進み、そのロシアと準々決勝で死闘を繰り広げたクロアチア代表はアルゼンチン、イングランドといった格上をも打ち負かして、なんと今大会6戦無敗で決勝進出を果たした。

クロアチアはモドリッチやラキティッチといった世界トップクラスのプレイヤーを擁し、平均年俸も3億7800万円でAグループのトップに位置するとはいえ、平均年俸5億4000万~8億5000万円のSグループに入るサッカー大国とは、選手層においてどうしても大きな差を感じてしまう。実際に準決勝のイングランド戦では、ほとんどの選手に大きな疲労が見られたにもかかわらず、延長に入るまで交代カードを1枚も切ることができなかった。決勝戦でも疲労の蓄積が心配される。もしそんなクロアチアが優勝するようなことがあれば、日本やロシアを超えて、もっとも意外な活躍をした国として人々に記憶されることになるだろう。