ウオッカ?ジェンティルドンナ?日本競馬史上最強の牝馬といえば

文化
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photo by Cake6(CC)

何かの折に「専門紙記者が選ぶ『史上最強のオンナ馬』」という記事を偶然見つけた。そこでは、ウオッカが大差で1位に選ばれていた。ウオッカはとても好きな馬ではあったものの、「史上最強牝馬」か?と問われると応とはいえない自分がいる。そこで、その競馬専門紙「優馬」と「競友」の記者が選んだ「史上最強のオンナ馬」のアンケート結果に、ダメ出し(?)を加えていく形で私論を出したい。

専門紙記者が選ぶ『史上最強のオンナ馬』 ウオッカ、ジェンティルら女傑が続々登場 - スポーツナビ
 今年のクラシック初戦となる桜花賞が今週末に開催。同レースの勝ち馬にも歴代の女傑が名を連ねていますが、果てして「日本競馬…

検討

1位 ウオッカ(11票)

2004年生まれ。G1成績:7-2-3-5(うち牡馬混合G1成績:5-0-2-5)。64年ぶりに牝馬として日本ダービー制覇。その後も、牡馬相手に2度の安田記念、天皇賞(秋)、ジャパンカップを勝利。特に府中の1600mでは無類の強さを発揮した。陣営もこの特性をよく把握し、4歳初戦の京都記念(6着)を最後に、府中とドバイ以外の競馬場では決して走らせようとはしなかった。阪神の宝塚記念や中山の有馬記念では勝負にならないと踏んだのだろう。血統背景などからも熱心に応援していた馬だが、「史上最強牝馬」と呼ぶには府中以外の実績があまりにも不足している。

2位 ヒシアマゾン(6票)

1991年生まれ。G1成績:2-2-0-4(うち牡馬混合G1成績:0-2-0-3)。有馬記念とジャパンカップというコース形態の異なる最高の舞台で、ナリタブライアンとランドという当時の日独最強馬に食い下がった点は評価できる。中長距離路線において牡馬と互角に渡り合える牝馬が長らく出ていなかった時代だけに、とても強烈な印象を残したであろうことは想像に難くない。とはいえ、今となってはさすがに実績の点で見劣る。この時代から1頭選ぶとしても、当然2つ下のエアグルーヴではないか、という気がしないでもない。

2位 ジェンティルドンナ(6票)

2009年生まれ。G1成績:7-3-1-2(うち牡馬混合G1成績:4-3-1-2)。牝馬三冠を達成した時点では、ブエナビスタより下、アパパネよりは少し上くらいの評価だったように思う。その後、国内ではジャパンカップ(2度)と有馬記念を制覇しているものの、「不利を与えた」「相手に恵まれた」「展開が向いた」といった留保が一部ではついた。勝つ時は僅差、負ける時は完敗というのも強い印象を残さなかった。それも相手が、ゴールドシップ(宝塚記念)、ジャスタウェイ(天皇賞・秋)、エピファネイア(ジャパンカップ)なら仕方ないと思える部分はある。それに5歳時のドバイシーマC(1着)は文句なしに強かった。実績だけ見れば、「史上最強牝馬」を名乗るに相応しい馬といえるだろう。

4位 ダイワスカーレット(5票)

2004年生まれ。G1成績:4-2-0-0(うち牡馬混合G1成績:1-2-0-0)。生涯を通して、12戦8勝2着4回のパーフェクト連対。同世代のウオッカとは5戦して3勝2敗。最後の対戦となった天皇賞(秋)では、同馬にとって不利な材料が重なりながらも2cm差の2着に逃げ粘った。圧巻は2度の有馬記念。3歳時の2着(5人気)はややフロック視されたが、結果的に引退レースとなった4歳時の1着(1人気)は、牝馬として有馬記念では異例となる単勝2.6倍の支持を集め、2着以下を0.3秒ちぎっての完勝劇。1600mでも2500mでも強い競馬をし、府中でも中山でも結果を残した。順調に使われていれば、当然「史上最強牝馬」として異論の出ない地位を築いていた可能性は高い。

5位 テスコガビー(4票)

1972年生まれ。G1級成績:2-0-0-0(うち牡馬混合G1級成績:0-0-0-0)。桜花賞は1.9秒差の大差勝ち、オークスは1.3秒差の8馬身差勝ち。この2冠の勝ち方には、ダイワスカーレット以上に故障さえなければと思わせるものがある。しかし、競馬に「たられば」は禁物。最後の勝鞍が3歳春G1の馬を「史上最強牝馬」と呼ぶことはできない。

6位 エアグルーヴ(2票)

1993年生まれ。G1成績:2-3-3-2(うち牡馬混合G1成績:1-2-2-1)。4歳時に天皇賞(秋)を制覇。長らく中長距離の牡馬混合GⅠで日本の牝馬が勝てない時代が続いていたから(外国馬は80年代のジャパンカップを3勝している)、その勝利は今では想像できないくらいの驚きをもって迎えられた。そしてジャパンカップでは、凱旋門賞2年連続2着の英国最強馬ピルサドスキーと壮絶な叩き合いを演じて2着。有馬記念も3着に敗れはしたものの、牝馬で秋古馬三冠を1、2、3着はブエナビスタに次ぐ立派な成績。トニービン産駒らしく府中以外ではやや脚が甘くなったが、それでもジェンティルドンナ以上の安定感があった。

7位 ブエナビスタ(1票)

2006年生まれ。G1成績:6-7-2-3(うち牡馬混合G1成績:2-6-0-3)。2歳秋のデビュー戦から5歳秋の天皇賞(秋)まで、19戦連続1番人気に支持された。これはテイエムオペラオーが持つ15戦連続を大幅に更新する記録となる。そして、この19戦を2度の降着がありながらも、8-7-3-1という成績でまとめ上げた。距離は1600mから2500mまでこなし、コース形態や馬場状態も不問。エアグルーヴやジェンティルドンナと比べて牡馬のライバルに恵まれたとはいえ、2年近くにわたって、絶対的な支持を得る「日本最強馬」として君臨し続けた。その実績を踏まえれば、牝馬の枠を超えて「日本史上最強馬」の論争に加わることのできる唯一の牝馬といえるのではないだろうか。

私論

1位 ブエナビスタ

2位 ジェンティルドンナ

3位 エアグルーヴ

4位 ダイワスカーレット

5位 ウオッカ

ブエナビスタは2010年の秋古馬三冠を1、2(降)、2着。エアグルーヴの1、2、3着を超える成績を残した。もちろん秋古馬三冠以外でも安定した走りを見せており、歴代牝馬の中では別格と考える。ブエナビスタほどの絶対感はなかったものの、ジェンティルドンナは強い牡馬を相手に混合GⅠ4勝。エアグルーヴより上位としたい。ダイワスカーレットは脚元さえ丈夫であれば「史上最強牝馬」の座も狙えた。ウオッカとどちらが上かといえば、やはり直接対決で勝ち越し、中央4場すべてで実績を残したダイワ。

追記

2018年秋、ロードカナロア産駒のアーモンドアイが牝馬三冠を達成し、続くジャパンカップでも並み居る古馬を圧倒して年度代表馬の座を掴んだ。そのパフォーマンスは、同じく牝馬三冠とジャパンカップを制した2012年の年度代表馬ジェンティルドンナのそれを優に上回るものであった。2019年の春にはドバイターフへの出走が予定されており、その結果次第では秋の凱旋門賞も視野に入ってくる。もし、エルコンドルパサー、ディープインパクト、そしてオルフェーヴルでも手の届かなかったその凱旋門賞を制することがあるとすれば、歴代の名馬たちを押しのけ、この馬が「日本史上最強馬」として君臨することになるのだろうか。

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