真の犯罪発生率ランキングから見る大阪市24区の治安度と特徴

社会
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とある理由により、大阪市内の各エリアの正確な治安状態を知る必要が出てきたことから、各種HPや図書館で治安度なるものを少し調べてみた。ところが、いわゆる夜間人口を基にした犯罪発生率や印象論の域を出ない根拠の曖昧な治安度のランキングしか見つからなかった。

夜間人口を基にした犯罪発生率だと、夜間と比べて日中で人の数が3~4倍に膨れ上がる北区や中央区では当然、その数値は不自然なくらい跳ね上がることになる。たとえば、治安の悪い区としてすっかり定着してしまった西成区と比べても、2.5~3.5倍といった具合に。

そこで今回は、総務省統計局「平成27年国勢調査報告」と大阪府警察「平成29年犯罪統計」を用いて、昼夜問わずその区における最大人口を基にした犯罪発生率を割り出し、それらを5つのグループに分けてそれぞれの特徴を見ていきたい。

治安度Aグループ(1~5位)

順位 区名 最大人口 犯罪発生件数 犯罪発生率
1 此花区 81,835 715 0.87
2 西区 176,835 1,816 1.03
3 住吉区 154,239 1,631 1.06
4 西淀川区 100,067 1,066 1.07
5 福島区 90,062 971 1.08
此花区(1位)

来場者1日1万人超のUSJを有し、やや特殊な区といえる。もっとも、常住人口(66,656人)で計算しても犯罪発生率は1.07と優秀。大阪環状線と2009年に開業した阪神なんば線が交わる西九条や、2025年に「大阪・関西万博」が開催される予定の夢洲エリアは開発も期待される。治安面では、その夢洲エリアへ誘致中の統合型リゾート(IR)による影響がやや気がかり。

西区(2位)

東部は、靭公園やお洒落な街として知られるようになった堀江の周辺にオフィスビルや高層マンションが立ち並び、市内屈指の人口急増エリアとなっている。西部は、昔ながらの九条商店街を中心に下町情緒あふれる街並みが広がり、飛田新地(西成区)に次ぐ元遊郭・松島新地や旧川口外国人居留地などのディープスポットも。このように、木津川を挟んで東部と西部ではその性格は大きく異なるものの、その治安の良さから総じて人気の区となっている。

住吉区(3位)

この区も南東部以外は治安の良さに定評がある。市の南端に位置するが、大阪の大動脈である御堂筋線やなにわ筋線に接続予定のJR阪和線、南海本線・高野線が南北に走る。西部には全国屈指の参拝者数を誇る住吉大社が鎮座し、高級住宅街として名の通った帝塚山はじめ、落ち着いた街並みが広がっている。繁華街らしい繁華街はなく、その区名の通り「住」に特化した区といえるだろう。

西淀川区(4位)

此花・福島区と尼崎市(兵庫県)の間に位置する。かつては工業地区として知られていただけに、この順位は意外といえば意外かもしれない。近年はお隣の尼崎市と歩調を合わせるかのように、阪神間の人気エリアとして高層マンションの建設が進み、区の色を大きく変えつつある。上記の住吉区と同様、繁華街と呼べるような街は形成されていないので、治安の良い住宅地区として存在感を示していきたいところ。

福島区(5位)

大阪(梅田)駅のお隣である福島駅や阪神電車野田駅の周辺は大阪有数の飲食街となっており、テレビなどで取り上げられる機会も多い。その付近にはどちらかというと単身者用の高層マンションが多く建ち、西区東部と並ぶ人口急増エリアとなっている。阪神高速道路を西へ越えるとぐんと一般住宅が増え、南端には2004年に大規模改修を終えた中央卸売市場本場が所在する。「住」だけでなく「食」にも適した区といえるだろう。

治安度Bグループ(6~10位)

順位 区名 最大人口 犯罪発生件数 犯罪発生率
6 天王寺区 120,107 1,370 1.141
7 旭区 91,608 1,048 1.144
8 城東区 164,697 1,894 1.15
9 住之江区 140,036 1,639 1.17
10 淀川区 228,116 2,736 1.20
天王寺区(6位)

大阪第三の繁華街である天王寺・阿倍野の北エリアや上本町を有し、浪速区や生野区といった治安の悪い区に囲まれながらも、奇跡的に治安を維持している市内屈指の文教地区。区内には大阪教育大付属や星光学院、四天王寺などの難関中高が多数所在し、四天王寺や生國魂神社などの神社仏閣、天王寺公園や真田山公園などの自然も多く、単身世帯からファミリー世帯まで広くおすすめできる。

旭区・城東区(7位・8位)

城東区は大阪第四の繁華街かつ大阪屈指の歓楽街でもある京橋の一部を有し、人口密度は東京23区を除く行政区の中では全国トップ。そのお隣の旭区は大阪の商店街で天神橋筋商店街と心斎橋筋商店街に次ぐ知名度(?)を持つ千林商店街があり、閑静な住宅街が広がっている。いずれも西部の一部地域を除いて、住宅地として市東部の人気エリアとなっている。

住之江区(9位)

住吉区と接する東部は住之江競艇場付近を除いて治安の良い住宅街。埋立地である西部の咲洲地区は大阪ベイエリアを代表する近未来的な街並みを形成している一方で工場なども多く、その治安度や雰囲気は地区によってまちまちとなっている。

淀川区(10位)

中央部には大阪第五の繁華街で大阪有数の歓楽街でもある十三を有し、東部には大阪の玄関口・新大阪をあわせ持つ。新大阪は現在、繁華街というよりはただのオフィス街にとどまるが、リニア中央新幹線や北陸新幹線の乗り入れを見据えて、十三や淡路(東淀川区)をも含めた大規模な再開発が予定されている。

治安度Cグループ(11~15位)

順位 区名 最大人口 犯罪発生件数 犯罪発生率
11 平野区 196,633 2,510 1.276
12 大正区 66,706 854 1.2802
13 港区 86,503 1,108 1.2808
14 鶴見区 111,557 1,465 1.31
15 東淀川区 175,530 2,319 1.32
平野区(11位)

中央部に鉄道は大阪メトロ谷町線しか走っていないが、常住人口196,633人は24区の中で断然トップ。一定の住み良さを提供している。区の大部分は1955年に市へ編入されたもので、大阪市というよりは隣の八尾市に似た性質を感じさせる。

大正区(12位)

人口の4分の1ほどが沖縄出身者とその子孫とされ、南部の平尾には「リトル沖縄」を形成している。常住人口65,141人は24区の中で最下位で、鉄道も北端に1駅(大正駅)しか整備されていない。かなり特殊な区といえるだろう。

港区(13位)

高層ビルが立ち並ぶ弁天町を中心に開発が進み、大阪メトロ中央線は天保山エリアから夢洲エリア(此花区)まで延伸予定。その天保山は戦前まで大阪港の中枢機能を担っていたが、現在は世界規模の水族館や観覧車が設置され大阪屈指の観光スポットとなっている。

鶴見区(14位)

1990年開催の国際花と緑の博覧会のメイン会場となった花博記念公園鶴見緑地が区の大きなシンボルとなっている。平野区と同じく区の大部分は1955年に市へ編入されたもので、その性質は大阪市よりは隣接する門真市や大東市に近いかもしれない。

東淀川区(15位)

中心駅は区の中央部に位置する淡路駅。阪急電鉄の京都本線と千里線の乗換駅で、2019年3月に全線開業したJRおおさか東線のJR淡路駅も近くに設置されており、大きな発展が期待される。その他は西部の一部地域を除いて、住宅地として市北部の人気エリアとなっている。

治安度Dグループ(16~20位)

順位 区名 最大人口 犯罪発生件数 犯罪発生率
16 阿倍野区 118,445 1,665 1.41
17 東住吉区 126,299 1,793 1.42
18 中央区 454,554 6,603 1.45
19 北区 411,133 6,098 1.48
20 生野区 130,167 1,935 1.49
阿倍野区(16位)

大阪第三の繁華街である天王寺・阿倍野の南エリアを有する。近年、このエリアではあべのハルカスを中心に大規模な再開発が行われ、若者の数を急激に増やしている。その他の地域は、北畠から住吉区の帝塚山まで伸びる大阪屈指の高級住宅街をはじめ、治安の良い住宅街が広がっている。

東住吉区(17位)

北部は駒川商店街を中心に閑静な住宅街が広がっている。西部にはランニングで賑わう長居公園もあり、住み良い区として一定の評価を得ている。南部の矢田地区は治安が悪いことで知られるが、大阪府警察「犯罪発生マップ」を見るかぎりでは、地域による偏りは見られない。

中央区(18位)

かつての大阪経済の中心地である船場から大阪城エリアまでを管轄する東区と、大阪一の歓楽街であるミナミ(難波~道頓堀)界隈を管轄する南区が、1989年に合併して誕生した区。大阪を象徴する区といってもいいだろう。ミナミには暴力団や半グレ集団の事務所・拠点も多く、近年は外国人観光客の急増もあいまって、ますます種々雑多な街になっている。他方、東部の谷町筋沿いは住宅地としても人気のエリアで、高層マンションが次々と建設されている。

北区(19位)

ミナミが大阪一の歓楽街だとすれば、梅田を中心とするキタは大阪一の繁華街となるだろうか。中崎町辺りは妖しげな匂いも立ち込めるが、ミナミに比べるとキタは全体的に危険な場所が少なく、部外者でも立ち入りやすい印象がある。暴力団関係者や外国人観光客もミナミほどはいない。東部には日本一長いアーケード商店街とされる天神橋筋商店街が南北に走り、大阪・梅田駅周辺とは違う庶民的な空気を醸し出している。

生野区(20位)

「沖縄」の大正に対して、生野は「コリア」のイメージを前面に出す。鶴橋駅から連綿と続く「生野コリアタウン」は日本最大のコリアタウンとされ、2000年代前半の韓流ブーム以降は観光客の出入りも多くなっている。韓国籍だけでなく中国籍やベトナム籍の住民も多く、5人に1人は外国籍という非常にオープンな区。それだけに西成区の次に治安の悪い区というイメージを持つ人も多いと思うが、ここでの治安度はなんとか20位に踏みとどまっている。

治安度Eグループ(21~24位)

順位 区名 最大人口 犯罪発生件数 犯罪発生率
21 東成区 80,563 1,229 1.53
22 都島区 104,727 1,711 1.63
23 西成区 115,630 2,203 1.91
24 浪速区 105,451 2,598 2.46
東成区(21位)

上記の生野区と城東区は終戦直前に東成から分離したもので、生野コリアタウンに接する南部は生野に次いで韓国籍住民の多いエリアとなっている。森ノ宮に接する北西部は高層マンションが立ち並ぶ新住民の多いエリアで、その雰囲気はガラリと変わる。逆に、布施(東大阪市)に接する東部は一般住宅に住む旧住民の多いエリアといってよく、浪速区に次いで面積の小さい区でありながら、その特徴は一括りにはできない複雑かつバラエティに富んだものとなっている。

都島区(22位)

南東部に大阪第四の繁華街・京橋の大部分を有する。京橋は大阪屈指の飲み屋街・風俗街でもある。その京橋から西へ少し歩いたところにある毛馬桜之宮公園は桜の名所として知られるが、その一方で浮浪者が多く、周辺にはラブホテルも林立し、同じ大川沿いにある西日本最大の拘置所・大阪拘置所とともにダークな雰囲気を醸し出す。とはいえ、大部分は住宅地として人気の区となっており、他県から移り住んできた新住民も多い。特に高層マンションが群れをなすベルパークシティやセントプレイスシティは、大阪拘置所に隣接する位置にありながら人気。総務省統計局「平成27年国勢調査報告」によると、この友渕町1丁目と善源寺町2丁目のわずかなエリアだけで、区のおよそ4分の1に当たる23,519人が住んでいることになる。

西成区(23位)

大阪維新の会が大阪府市の舵取りをするようになってから、何かと注目される機会が多くなった西成。治安が悪く生活保護受給率の高い区として、いまや全国区となってしまった感がある。とはいえ、この区もエリアによってその様相はガラリと変わってくる。阿倍野区と住吉区に接する南東部は大阪の平均的な住宅街が広がっており、天下茶屋や岸里玉出などはむしろ人気のエリア。住之江区に接する南西部も大型ホームセンターや人気チェーン店などロードサイド店舗が立ち並ぶ生活に便利なエリアとなっている。大阪の人間でも危険視する北部にしたって、最近では若者や観光客が平気で闊歩する姿が見られるように、私的な介入さえしなければ世界的にはとても平和なエリアといえるだろう。

浪速区(24位)

南部は東側も西側も、世界的に見ればとても平和な場所といえる西成区の北部(上記参照)との連続性が強いエリアとなっている。その中心となる新今宮駅周辺は星野リゾートの参入や中華街の構想など大規模な再開発が予定されている。通天閣がそびえ立つ新世界から日本最大のドヤ街・あいりん地区、日本最大のちょんの間・飛田新地(西成区)にかけてのエリアに、それだけ他にはない魅力があるということなのだろう。西成と比べて犯罪発生率が高く出ているのは、浪速は全国の行政区において最も面積の小さい区となり、西成の南部に広がるような一般的な住宅街が極端に少ないためと考えられる。また、大阪市「平成29年大阪市の推計人口年報」によると、浪速は大阪24区の中で最も転入率・転出率が高く(西成は大阪市全体のほぼ平均値)、いわゆる「流れ者」が多い。それでも、JR難波駅や桜川駅の周辺にはファミリー世帯用の高層マンションも建つようになり、新今宮駅の星野リゾート共々、浪速の街を大きく変えつつある。

参考文献

・総務省統計局「平成27年国勢調査報告」

・大阪府警察「平成29年犯罪統計」

・大阪府警察「犯罪発生マップ」

・大阪市「平成29年大阪市の推計人口年報」